2019/01/07 弁護士のひとりごと
レビンさん-急性腎不全と闘った猫③
ぼくが、家にやってきたころ、ママは、しほうしけんのべんきょうをしていた。
ママは、べんごしになりたいんだって。
まーくんが、もっと、もっと、ちいさかったころから、もう5ねんも、べんきょうしていた。
あさ、ママは4じ30ふんころおきる。ぼくにあさごはんをくれて、すこしのあいだ、べんきょうする。
そして、そうじやせんたくをすませると、家をでていって、ゆうがたかえってくる。
ぼくに、ばんごはんをくれたあと、まーくんといっしょに、ごはんをたべる。
まいにち、まいにち、おなじせいかつをしている。
ぼくは、まいにち、ひとりでおるすばんをする。
おかあさんや、妹たちとは、もうあそべないけれど、ひとりでもへいきだ。ぼくは、誇りたかいねこなのだ。
さむいふゆがおわって、あたたかくなってきたころ、ぼくをなでてくれるママの手が、すこしだけふるえていた。
「もうすぐしけんなのよ」ママは、声をふるわせながらいう。
「ことしはうかるかな?」
ぼくは神さまにおねがいしてみた。
「ママをしほうしけんにごうかくさせてあげて」
神さまはこたえた。
「にんげんが、しけんにうかるかどうかは、神にもどうすることもできないことなのだ」
神さまのけちー!ママはあんなにがんばっているんだよ!
「にんげんが、しけんにうかるかどうかは、どうすることもできないが、おまえのママはごうかくするだけの、どりょくをしているよ」
「げんじつに、うかるかどうかは、しけんのほんばんで、おちついていられるかどうかだな」
ぼくは神さまにきいた。
「どうすれば、しけんのほんばんで、おちついていられるの?」
「神にはどうすることもできない。だが、ねこのおまえになら、できることがある」
「どんなことをすればいいの?」
神さまはいう。
「なあに、しけんのまえに、おまえの毛がわを、ママに、なでさせてやればよい」
「ただし、ママがしけんにごうかくしたら、おまえは、いまよりずっと、さみしいおもいをすることになるぞ。それでもよいのか?」
それでもいい。ぼくはママのわらうかおが、だいすきなんだ。
ぼくは、しけんの日、いつもよりながく、ママに、毛がわをなでさせてあげた。
ママは、しけんの日、いつもよりすこしだけ、ながく、ぼくにブラッシングをしてくれた。
そうして、家をでて、しけんかいじょうへいった。
あついなつがすぎ、すこし、すずしくなったある日、ママはどこかへでかけていった。
そのよる、ママはかえってこなかった。
そのつぎの日も・・・・・・。そのまたつぎの日も・・・・・・。
神さまがいっていた、「いまよりずっと、さみしいおもい」って、ママがいなくなる、ってことだったのか!
・・・かなしい。かなしい。もちろん、誇りたかいねこは、かなしさを、おくびにもだしてはいけない。・・・でも、かなしい。
そうして1しゅうかんがたったころ、ききおぼえのあるあしおとがした。ママだ!
いきおいよく、げんかんのドアがあいて、ママがかえってきた!
ぼくは、うれしくて、うれしくて、うれしくて、いっしゅん、泣きそうなかおになってしまった!!
・・・ダメだ。ぼくは、誇りたかいねこなんだ。けっして、にんげんのまえで、泣いたりはしない。
1しゅうかんものあいだ、ぼくのおせわをおこたった、ママには、おわびをしてもらわないと!
ぼくは、おわびとして、ママに、うでまくらをしてもらうことにした。あったかくて、ママのにおいがして、きもちいい~。
ママは、とおいところで、1しゅうかん、ほとんどねないで、しけんをうけていたのだって。
ぼくとママは、だきあって、ぐっすりねむった。にっこりわらいあって、ぐっすりねむった。
こうして、ママのしほうしけんは、おわった。
神さまのいったとおり、ぼくは、それまでより、すこしさみしいおもいをするようになった。
ときどき、ママが、夜かえってこないことがあったのだ。
それは、2、3日だったり、すうじゅう日だったりした。
でも、ぼくは、へいきだ。
だって、ぼくは、がくしゅうしたんだ。じっと、まっていれば、ママはかならずかえってくる。