2022/11/24 弁護士のひとりごと
il bello dorso 心に残る言葉
内外情勢調査会名古屋支部に二宮清純氏がいらして、講演をされた際に教えていただいた言葉です。
イタリア語で「美しい背中」という意味。この言葉を検索すると、二宮清純氏の名前がともにでてくるので、きっと色々な講演会で使っておられる言葉なのでしょう。
良きリーダーは、良い背中を持たなくてはならない、といった意味であったかと記憶します。人はリーダーの顔を見るのではなく、背中を見るのだと。
駆け出しの弁護士だった頃、被告人との打ち合わせのため、拘置所へ接見に行きました。雨の中、拘置所を出ると、冤罪事件を訴えて再審請求を何度もしている死刑囚の弁護団の団長先生が私の前を歩いていました。
先生の背中は心持ち丸く、うつむき加減でした。陰鬱な天気であった故か、まるで重たいものが背中にのしかかっているようでした。
異様な空気感に、どうしたんだろう?と思っていると、その先生は、ふい、と振り返り、再び拘置所へ戻っていきました。
その日の帰宅後、ニュースで、その死刑囚の再審請求が認められなかったことが分かりました。
私は事件の記録を見たこともなく、事実の当否は分かりません。
弁護士の仕事は他人の人生を背負います。
思うとおりになることもあれば、ならないこともあります。
私は、あの重たいものがのしかかったような先生の背中が、今まで見た弁護士の中で一番美しい背中だと思います。
背中で語る。簡単なことではありません。