2020/12/30 着物ふく
着物福 結城紬②
どの位眠っていたかしらね。私のところにある男の人が現れた。
その瞬間、分かったの。この人がわたくしを新しい管理人のところへ連れて行ってくれる人だと。
その人はわたくしを業者から買い取り、自分の店へ連れて行った。
そして、たくさんの着物達と一緒にして、値段をつけはじめた。
その男の人は、「証紙」がなくても、自分が結城紬だって思う着物には、ちょっと高い値段をつけていた。
そのときは、わたくしの他にも何枚か結城紬があった。でも、その結城紬達はみんな百亀甲。百六十亀甲の私の敵ではなかったわ。
いよいよわたくしの番。男の人が値段をつけようとしたとき、わたくしは、少し意地悪をした。
わたくしの管理人がちゃんとわたくしを買い取るように。
ほんのちょっとよ。
その男の人に、わたくしがありきたりの結城紬だって思わせたの。
その男の人は、わたくしにものすごく安い値段をつけた。他の百亀甲の結城紬より10万円も安い値段をよ。
やったわ!
そうして、わたくしは、他の着物達と一緒にお店に並び、新しい管理人を待つことにした。