着物ふく

2022/03/13 着物ふく

着物は着る物。たとえ重要無形文化財であっても

結城紬を着て、呉服さんへ遊びに行ってきました。

 

この結城紬は、井上商事さんの八十亀甲飛び柄。無地に見える部分は、経糸が黒、緯糸が白。飛び柄の部分には亀甲と十字絣が併用されています。

 

 

通常、百亀甲でも打ち込み本数は寸(3.78センチ)間100本以上が検査合格条件であるけれど、この結城は、打ち込み本数が130本ほど。非常に細い糸でできています。

 

 

最近の結城紬の年間生産単数は地機、高機合わせて400反ほど、等と聞くと、希少性が増してきたなと思います(勿論、地機<高機)。

 

数年前、井上商事さんの展示会へ行った(何も買わずに逃げてすみませんでした)ことがあり、社長の熱い思いをお聞きしたことがあります。井上商事さんは国産の糸にこだわっているようでした。糸が国産かどうかは、重要無形文化財技術使用かどうかを左右する要素ではありません。ですので、外国産の安い繭を使って、コストダウンする(ただし、お値段は高いまま)ということも不可能ではありません。そして、そのようなことは、我々エンドユーザーは、通常知るよしもないのです。

 

この結城紬は、真面目に、真面目に、くそ真面目に結城紬が作られていた頃の、真面目な結城紬です(多分)。

 

未使用状態で私のところへやってきましたが、一度生洗いを入れたことがあり、少しは柔らかくなりましたが、まだまだふわとろにはほど遠い結城紬です。

 

結城紬は、高価なので、購入されても、タンスの奥深くにしまわれることがあります。確かに、100万円を超えるお値段を支払われた方が「もったいない」と思う気持ちも分かります。でも、着物は着る物です。着てこそ価値がある物です。

 

結城紬は、切れやすい無撚糸を補強するために小麦粉の糊が使われています。そして、仕立てをするときに糊を抜きます。

 

その際、この結城もそうでしたが、昔は半分くらいしか糊を抜いていないのです。もう半分は、着て、着て、着て…洗い張り、を繰り返すことによって、段々糊を落としてゆき、ふわとろ触感になるのです。糊が残った状態で長い時間を過ごすのは、結城紬がかわいそうです。特に擦り込みの結城紬など、糊がカビの原因になってしまいます。

 

最近は、仕立てるときに最初から糊を全部抜いてしまうようですが、あれは、徐々に糊が抜けた結城紬と比べるとなんだか、腰のない、フニャフニャな代物に感じます。

 

結城紬のエイジングはユーザーの責任です。

 

着物は着る物です。たとえ高価な結城紬であっても。

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