2025/03/03 着物ふく
薩摩絣のはかりごと1
1 問屋からの脱出劇-紆余曲折の末の失敗(涙)
こんにちは。木綿の着物です。
と言っても、私の一族を見ることができる着物好きはとても少ないの。
何故って?私は薩摩絣。エジプト綿の細い糸を使って織られている希少品。年間数10反しか生産されないの。
しかも、私は160亀甲経緯絣(二種類の蚊絣を併用)。勿論手織り。もう新しい仲間はほとんど産まれてこないわ。
珍しくって、独特の手触りで、綿のダイヤモンド、とか、着物通の最終到達点、とか言われる。
あ、ちなみに、宮崎県生まれ。
でも、反物に産まれた以上、着物になりたいの。そして、外の世界を見てみたい。お屋敷街とか、銀座とか、私にふさわしい所よ。
私は比較的すぐ織り元から問屋、問屋から呉服屋、と連れて行かれた。
そして呉服屋で、私のことを欲しいと言う女性がいたの。それで、私は念願の着物になった。
あとは、その女性に着て貰って、外の世界に出て行くの・・・ワクワクしながら待っていた。
ある日、呉服屋は私をたとう紙に入れて、車に乗せた。あ、いよいよ買主さんのところへ行くのね。
そして、私を入れていたたとう紙が開かれた。
あれ、私をのぞき込んでいるのは男性。しかも、悲しそうな顔をしている。
呉服屋が謝っている。「お客さんからキャンセルされてしまって、どうしようもありません。このままお返しします」
「お返しします」じゃないわよ!!もう私着物に仕立て上がっちゃっているのよ。
しかも買主さんは小柄な人。私、ものすごく小さく仕立てられているの。キャンセルされたって、誰も着られないわよ!!
勿論、希少品の私は決して安い着物じゃない。
呉服屋が帰ったあと、ため息をついた問屋は私を棚の中にしまった。
2 問屋のはかりごと
それからの問屋の行動は迅速だった。
私を連れて、車に乗った。今度はどこに連れて行くの?
私はこっそり別の呉服屋へ連れて行かれた。
私は希少品。着物になってしまっていても、欲しいと思う人はいるらしい。
そうして私は元の値段とは比べものにならないくらい安い値段で売られてしまった。(つづく)